弁膜症疾患に対する外科的治療
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心臓の弁に対する手術は、次の2つがあります。
(1)弁形成術
自分の弁を修理して使う手術で、
逆流の原因となっている部分を切り取って縫い合わせたり、広がった弁を縮小して逆流しないようにする手術です。
自分の弁を残すため、細菌感染などで弁の破壊が進んでいる場合には行うことができません。
僧帽弁の逆流に対して第一選択として行われていますが、大動脈弁の逆流に対しては修理可能な場合のみ行っています。
狭窄症(弁が狭くなる病気)では形成術はできません。
(2)弁置換術
自分の弁を切り取って、代わりに人工弁を縫い付ける手術です。
形成術と異なり、どのような弁の異常でも可能です。
人工弁は2種類(機械弁と生体弁)あり、術前に選択する必要があります。
人工弁にはそれぞれ一長一短があります。
生体弁 機械弁 長所 原則、術後3ヶ月でワーファリンの
内服を中止できる(不整脈が無い場合)耐久性が優れている
短所 人工弁が劣化し、
再手術が必要となることがある一生、血が固まりにくくなる薬
(ワーファリン)の内服が必要です
血栓症?出血のリスク、食事の制限があります
ガイドラインでは、大動脈弁では 65 歳以上、
僧帽弁では 70 歳以上で生体弁の使用が推奨されており、特に大動脈弁では生体弁が多く使われています。
年齢?他の病気の有無?患者さんの希望などから、術前に話し合って人工弁の種類を決めます。
手術アプローチ
手術の傷の位置は、正中切開(胸の中央の縦に走る傷、約15-20cm)と右小開胸(胸の右側面の小さな傷)の2種類があります。
右小開胸手術の長所は、美容、早期退院?社会復帰、少ない出血量、少ない創部の感染などありますが、
患者さんの状態?手術内容等によって出来ない場合があります。
また、右小開胸手術の1つとしてロボット手術があります。
手術支援ロボット(ダヴィンチ)を使うことによって、深い術野でも良好な視野が得られ、
傷が小さい?術後痛みが少ない?出血量が少ないなどの利点があります。
右小開胸手術