外科的不整脈手術～メイズ手術、鏡視下手術～
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心房細動
心臓には心房というお部屋と心室というお部屋があります。
心房は血液を受ける部屋であり、心室に血液を送り出し、心室が肺や全身に血液を送っております。
心房細動とは言葉の通り、心房が痙攣（細かく震えている）している状態であり、心臓内において効果的に血液が流れておりません。
血液の流れが滞ると血栓という血の塊ができてしまいます。この血栓が心臓から全身に流れてしまうと全身の血管が詰まってしまいます。
代表的なのが脳梗塞であり、脳梗塞の約20-30％がこの心房細動が原因になっているとされております。
心房細動は臨床診療で遭遇する最も多い不整脈であり、高齢化が進む日本においては2050年には人口の約 1.1％ （103万人）が
心房細動を発症するとされております。
治療
心房細動の治療には脈を整える焼灼療法、そして血栓形成を予防するため血液をサラサラにする抗凝固療法があります。
動悸や息切れなど症状がある人にはカテーテルによる焼灼術が行われております。
抗凝固療法は血液をサラサラにするためその他出血の危険性を評価しながら検討されます。
不整脈治療
従来心臓血管外科では心臓の切開と縫合により電気の流れを整える手術が行われておりました。
縫合部分からの出血などの危険性がありましたが現在ではラジオ波での焼灼療法や亜酸化窒素による冷凍凝固療法などがあります。
また低侵襲手術が広まる中、胸を大きく切開せず行う小切開や内視鏡下での手術も行われるようになってきております。
完全胸腔鏡下手術では左側胸部に約1㎝程度の創を4か所おき、ポートという筒のようなものを挿入し、
ポートからカメラや手術器具を胸腔内にいれながら手術を行います。
（日本メドトロニック社より提供）
左心耳について
心房の一部に心耳というお部屋があり、心房細動における血栓の90％がこの左心耳の中にできるとされております。
心房内で血栓ができないようにするため抗凝固療法がおこなわれますが、抗凝固療法が必要な患者さんのうち
30-50％が出血の危険性などにより抗凝固療法が好ましくなく、抗凝固療法を行っている患者さんの16-50％においては
適切な抗凝固状態が維持できていない（サラサラにならない、またはサラサラになりすぎている）との報告もあります。
脳梗塞予防
脳梗塞の原因となる左心耳を閉鎖することにより脳梗塞を予防することができます。
焼灼術を行っても脈が正常に戻らない患者さんがいる一方、焼灼術後でも発作的に心房細動を起こし、
脳梗塞を起こす患者さんもおられます。
その他上記の通り出血の危険性が高く抗凝固療法が行えない人もいます。
このような患者さんにおいては左心耳を閉鎖することにより抗凝固療法を行わずにして脳梗塞を予防することが可能となります。
左心耳閉鎖術も特殊な閉鎖医療機器（クリップ）を用い、完全内視鏡下で行うことができるようになっております。
（センチュリーメディカル社より提供）
参考文献
- Inoue H, Fujiki A, Origasa H, Ogawa S, Okumura K, Kubota I et al. Prevalence of atrial fibrillation in the general population of Japan: an analysis based on periodic health examination. International journal of cardiology 2009;137:102-7.
- Cox JL, Schuessler RB, D'Agostino HJ, Jr., Stone CM, Chang BC, Cain ME et al. The surgical treatment of atrial fibrillation. III. Development of a definitive surgical procedure. The Journal of thoracic and cardiovascular surgery 1991;101:569-83.
- Lee AM, Clark K, Bailey MS, Aziz A, Schuessler RB, Damiano RJ, Jr. A minimally invasive cox-maze procedure: operative technique and results. Innovations (Philadelphia, Pa) 2010;5:281-6.
- 栗田隆志、野上昭彦. 不整脈非薬物治療ガイドライン. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン 2021.