平成23年9月
医療機関各位
栃木県医師会 会長 太田 照男
糖尿病パス部会委員長 尾形 直三郎
現在、糖尿病患者の数は増加しており糖尿病を専門とする医師(医療機関)だけでは物理的に診きれない状況になってきており、専門医と非専門医との協力による「循環型」または「双方向型」の糖尿病診療が求められています。「循環型」あるいは「双方向型」の意味は、「病院のコントロール良好な患者を診療所へ振り分けると同時に、診療所のコントロール不良な患者を病院へ送る形でスタートし、比較的コントロールの良い患者については通常診療所が管理しながら、コントロール悪化の際あるいはそうでなくても半年に1度程度は専門医療機関でチェック?治療をする??????これを繰り返す」ということです。これには、単に血糖のコントロールだけではなく、内科と眼科の連携なども含まれます。また、単に病診連携だけですと、病院の専門医の負担が増えてしまう可能性もあり、診診連携も必要です。更には、現在はまだ困難と思いますが、必ずしも専門医を通さなくても、かかりつけ医が例えば頚動脈エコーを病院(技師)に依頼できるようなシステムが必要となると思います。
このような連携の輪を広げていくためには、専門医、かかりつけ医、そして患者がデータを共有するための一定のルールを備えたシステム(パス)が必要です。パスの最も大きい狙いは、専門医の負担を軽減することですが、患者にメリットがなければ、初めからパスは成り立ちませんので、患者により良い医療を提供することが必要です。そのためにはかかりつけ医療機関のレベルアップが望まれます。例えば、かかりつけ医としては、投薬の変更などが必要な際にはある程度できなければなりません。そうでなければ、専門医療機関での3ヶ月処方の方が患者にとっては、むしろ有り難いのではないでしょうか。患者に説明し、納得を得るというかなり高いハードルがありますが、連携がうまく行けば3者にとってメリットはあると思います。
栃木県医師会では、上記のことを踏まえ、糖尿病地域連携パスを作成しました。このパスは、かかりつけ医から専門医療機関への依頼からもスタートできますし、専門医療機関からかかりつけ医への(逆)紹介からでもスタートできるように工夫してあります。
栃木県では、ホームページ(「とちぎ医療情報ネット」http://www.qq.pref.tochigi.jp/)で、糖尿病の医療に携わることができる医療機関のリストを、手挙げ方式で4つの機能別に区分して公表 しています。それらは以下の如くです。
①初期?安定期の治療を行ういわゆるかかりつけ医療機関
②専門治療を行う入院施設を有する医療機関
③急性合併症の治療が可能な救急医療機関
④慢性合併症(網膜症、腎症、神経障害)の専門治療が可能な医療機関
これらのうち、公的私的を問わず②③④の医療機関を専門医療機関または中核病院と位置づけ、①の医療機関をかかりつけ医と見なしています。なお、ここでの「専門医」とは、学会認定専門医は勿論含まれますが、少しあいまいですが、内分泌科や代謝科等にて十分な研修をした経験のある医師との位置づけです。
リストアップの各医療機関に於かれましては、糖尿病医療連携クリティカルパス事業に参加して頂きますようお願いいたしたく、関係資料等お送りいたします。また、上記医療機関リストに掲載されていない医療機関につきましてもご参加頂きたく、希望があれば資料等お送りしますので県医師会(028-622-2655:クリティカルパス担当)までご連絡お願いいたします。
#①診療情報提供書(かかりつけ医→専門医療機関)
いわゆるかかりつけ医が、患者が戻ってくるつもりで書く専門医療機関への依頼書
#②診療情報提供書(専門医療機関→かかりつけ医)
専門医療機関の外来で十分安定した患者を近医にお願いする紹介状
かかりつけ医からの患者を逆紹介の際に使用する紹介状、または逆紹介できない場合の報告書
#③専門医療機関用(入院?外来)サマリー???? #②に添付のフォーマット
専門医療機関独自の電子カルテ関連のフォーマットがある場合はそれで代用も可)
#④ご返事(かかりつけ医→専門医療機関)ハガキ
#②に対する返事で特記事項はありません
※連携パスの利用状況把握のため、栃木県医師会宛てのハガキもご投函願います。
#⑤糖尿病連携手帳(目本糖尿病協会編)
#①#②のやりとりの後、かかりつけ医での5~6ヶ月間程度のデータを記載
約半年に一度を目安として専門医療機関のデータを記入
患者が常時持つべきものとして、患者及び両医療機関の3者でのデータ共有ができる
(紛失は非常に困る問題)
このパスは電子カルテには対応できていません。 現時点では、医療保険上の問題もあります。同月2医療機関に受診ということが起きた際に、特定疾患療養管理料や在宅自己注射指導管理料などは原則重複請求ができません。どちらの医療機関で請求するのか、また自己血糖測定の際に、どちらが機器の費用を負担するのかなどの問題が残っています。これらについては、今のところ医療機関同士で相談して頂くしか方法がありません。
糖尿病医療連携パスに対して、上記の問題についての解決は勿論、何らかの形で保険点数が認められることが望まれます。
以上ご理解をいただき、是非、栃木県糖尿病医療連携クリティカルパス事業へご参加いただきますよう重ねてお願いいたします。
栃木県糖尿病医療連携クリティカルパスは、5つのフォーマットで成り立っています。それぞれのフォーマットについて記載要領などを述べます。